30歳直前で無職になる。

激務にセクハラに社内ニートに何もかもから逃げ果せた今、自分がどうなってしまったのか、どこに向かっているのか、真剣に向き合ってみます。

「心臓が動いてるということは、現場は回ってるね。」

新卒で入った会社では、本当にいろんな経験をしてきたと思う、というのはもはや定型分。

あらゆるパターンのトラブルに遭遇してきたことから、

新卒2年目の私を、本社の上司は「消火器」と言っていた。

(「放火魔」ではなかったのは、報告をあげる速度がスピード違反級だったからだろう。

そもそも既に炎上した現場に置いていかれるのだから、「消防士」でしょ。)

 

 

SIerに勤めた私の初めての現場は、Windows7のサポート終了に伴う、

Windows10へのPC入れ替えプロジェクトだった。

「自身でデータ移行を行うことで、社員のITリテラシーを高めたい」というのが、

顧客の要望のうちの1つだった。

ブラインドタッチができるだけで入社し、真面目に内定者・新入社員研修を受けてきた私は、

それを聞いて「なんてことない」と、大体の道筋を立てていた。

 

手順書を見ながら、2台のPCを線で繋いで、新しいPCのデスクトップにあらかじめ置かれた

データ移行用のファイルをダブルクリックして終了のポップアップを待つだけで完了する。

そして、本来は個々に割り当てられたクラウド上のフォルダにファイルを保存しているのが、

この客先の規定でもあったのだから、ユーザがあれこれ指定して移行するようなデータなんて

規定に準じていればあるわけもないのだ。

 

外回りの多いユーザにとって、PC本体にデータを保存することはリスクで、

そのためにIT部門が予算をとって十分な容量をクラウドに確保している。

 

しかし実際には、ほとんどのユーザがそれをしていない、というより認知していなかった。

 

ユーザが入社してからのPCの初期設定や利用規定の説明やフォローは、

客先の社内ヘルプデスクの仕事であるはずだった。

しかし、上同士が対立していたことで、ほとんどの情報が共有し合われることがなく、

多くの問題が一斉に絡まり合い、終電の頃にようやく解ける。

これを毎日繰り返した。

 

当然、たらい回しにされるユーザからはクレームも多かった。

加えて疲労も限界にきており、通勤電車での失神は何度もあり、

朝のラッシュだというのに、他の乗客にひどく迷惑をかけてきた。

パワハラとセクハラで現場を出禁になった上司が、搬送先の病院に私を迎えにきて、

検査に問題がなく頭がはっきりしてくると、また電車で現場へ送り届けてくれる。

(この上司を私は「運び屋」と呼んでいた。)

 

 

また倒れたある日、現場のメンバーと担当営業でミーティングをすることになっていた。

待ち合わせ場所に来た営業は、私の顔を見て「目の下黒い、大丈夫?」と聞いてきたが、

隣の上司は「ただのメイク崩れだよな」と横槍を入れる。

担当営業もずいぶんとやつれているように見えた。

 

聞くところによると、他の担当現場にいる私の同期が、残業とパワハラですっかり参ってしまっているという。

本社への人員交代の要請も、「メンタルダウンはまだなんだよね?続投だよ。」と拒否されたようだ。

このベテラン営業がどのように報告をあげたのかはわからないが、本社の言葉はこう聞こえたという。

「まだ心臓が動いてるんでしょ。じゃあちゃんと現場は回ってるね。」と。

 

その同期は、その数週間後には連絡が取れなくなり、代行会社を通じて退職をしたようで、

その後がどうなっているかはわからない。

 

 

 

ハローワークの求人情報はインターネット上でも公開されており、

やはり大手の転職サイトよりも田舎には強いと感じる。

ここ北海道から大手サイトのアドバイザーと連絡を取ると、

「転居の必要なし」を第一に希望しているにも関わらず、

高速道路で車を飛ばして1時間半の街を紹介してくれるのが当たり前。

北海道特化であっても、9割は札幌の求人だろうか。

 

ハローワークで条件を増やしたり減らしたり、検索パターンは様々で、

「興味あるな」「こんなところで働いてみたいな」と思う場所がよくある。

よくあってもその先に進めないのは、この1社目での激務とセクハラ被害、

2社目での他人の社内不倫を傍観せざるを得なかったというのが、

少なからずショックになっているのだろうと思う。

 

なんにせよ、冬に頭皮にできた不毛地帯に産毛が生え始めるまでは、

焦ることはせず、暇に罪悪感を感じることなく、じっくり自分との会話を大事にしていきたい。